研究概要 |
甲状腺より分泌されるT4は5'脱ヨード反応によりT3に変換されその作用を発現する。Type 2 deiodinase (D2)は、5'脱ヨード反応を触媒し、局所でのT3濃度を調節する酵素である。私はヒト大動脈平滑筋細胞(hASMC)に、D2が発現している事を明らかにした。平成13年度は、hASMCのD2発現に及ぼす、platelet derived growth factor (PDGF),basic fibroblast growth factor (bFGF)の影響を検討した。 【方法】hASMCを増殖培地でconfluentになるまで培養し、その後1% FBSを含む培地で48時間培養した。更に、1% FBS培地に種々の試薬を添加した。D2酵素活性は細胞ホモジネートを、[^<125>I]T4とインクベートし、[^<125>I]T4より放出された^<125>Iをγカウンターで測定した。D2 mRNAレベルはNortherm blot法により解析した。 【結果・考察】PDGF及びbFGFは、時間及び容量依存性に、hASMCに発現するD2活性及びmRNAレベルを増加した。PDGF及びbFGFによるD2 mRNAの増加は、Actinomycin D及びcycloheximideの添加により抑制された。これらの結果より、PDGF及びbFGFはヒトD2遺伝子の発現を、転写レベルで、新規の蛋白合成を介し増加させる可能性が考えられた。PDGF及びbFGFによるD2 mRNAの増加は、Erk-activating kinase (MEK)/Erk cascadeの阻害剤であるPD98059の添加により抑制された。この結果より、PDGF及びbFGFは、主にMEK/Erk cascadeを介し、D2遺伝子の転写調節をしている可能性が示唆された。
|