研究概要 |
乳腺組織中のNGFの確認実験において,ラットミルク中に抗NGF抗体と反応する分子量65kDaの免疫反応物質が,また,乳腺組織ホモジネート中には分子量65kDaと26kDaの免疫反応物質が存在している事を認めた.加えて,授乳期乳腺において,分泌顆粒を放出している上皮細胞上部(内腔側)に抗NGF抗体と免疫学的に反応する物質が存在している事も認められ,乳腺上皮細胞がNGF様物質を産生/分泌している事が明らかになった.しかし,これらの分子量はいずれも標準NGF-β(13kDa)より大きいことから,乳腺上皮細胞ではpre/pro-formの形で産生/分泌されるか,あるいは他の物質との複合体としてミルク中に分泌されている可能性が示唆される. 一方,乳腺組織のおけるNGF-R^<p75>(低親和性受容体)とTrk(高親和性受容体)の局在性を検討するために,授乳期乳腺の凍結標本を用いて免疫組織化学的実験を試みた.その結果,乳腺上皮の基底層近傍において抗NGF-R^<p75>抗体との強い免疫染色反応が得られた.しかし,免疫反応部位が乳腺上皮細胞の基底部なのか,筋上皮細胞層なのか,あるいは間質細胞層なのかの判別が難しく,現在さらに詳細な検討を進めている.これらのことから,乳腺上皮細胞はNGF様物質を産生/分泌し,乳汁を介して新生児の生育に対する何らかの作用(例えば栄養源,免疫賦活作用など)に関わっている可能性が示唆される. 乳腺におけるNGF-β,NGF-R^<p75>,Trkの発現をより明確にするために,分子生物学的手法(Northern Blotting AnalysisあるいはRT-PCR法など)による解析実験も検討の予定で準備中である.
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