研究概要 |
本研究では,TNF-α産生性に影響する、TNF-αプロモーター領域の遺伝子多型、C(-857)T、C(-863)A、T(-1031)C、と糖尿性合併症の関連を日本人2型糖尿病患者を対象に解析した。対象は当科の2型糖尿病患者であり、それぞれの多型の有無によって2群に分けた;857C/Cと-857(C/T+T/T)、-863C/Cと-863(C/A+A/A)、-1031T/Tと-1031(T/C+C/C)。これらの多型はHardy-Weinberg平衡にあり、-863と-1031は連鎖不平衡にあった。 それぞれの多型の2群間で、性、年齢、糖尿病罹病期間、身長、BMI、空腹時血糖値、HbA1c、血清総コレステロール値、治療内容、血圧などの背景因子に有意差はなかった。(1)中性脂肪、LDLコ.レステロールは-857(C/T+T/T)で857C/Cよりも有意に高かったが、HDLコレステロールは逆に-857(C/T+T/T)で有意に低かった。-863と、-1031ではこれらの脂質値に有意差はなかった。(2)神経障害については、正中神経F波潜時が-857(C/T+T/T)では-857C/Cより有意に延長していたが、-863と-1031TNF-α多型については有意差はなかった。(3)顕性蛋白尿陽性者の頻度は-857(C/T+T/T)で857C/Cよりも有意に高かった。-863については-863(C/A+A/A)が-863C/Cよりも尿中アルブミン排泄量が少なかった。(4)網膜症の重症度はいずれの多型でも有意差がなかった。(5)動脈硬化の指標の脈波upstroke timeはC(-863)A多型と関連した。 以上から、TNF-α産生性に影響するTNF-αプロモーター領域の遺伝子多型は脂質代謝や糖尿病合併症に関連することが示唆された。
|