構造/機能が類似したHNF-1β(MODY5)とHNF-1α(MODY3)は、in vitroにおいてホモあるいはヘテロダイマーを形成して同じDNA配列に結合し、標的遺伝子の転写を活性化する。一方in vivoにおいては、ヘテロHNF-1α欠損マウスが耐糖能障害を呈するのに対し、同HNF-1β欠損マウスのインスリン分泌能は正常であることから、個体発生の過程で両者はそれぞれ特異的な生理機能を発揮していると予想された。これまでの研究結果から我々は、「HNF-1βは、優性阻害に働く変異体のみが糖尿病の成因となる」という仮説を立てた。本研究ではその仮説を検証するため、HNF-1β変異体発現マウスを作成しその解析を行うことを目指した。当該研究期間内に、変異体発現ベクターを構築、それをマウス受精卵へマイクロインジェクションし、変異体発現マウスの作成を試みた。しかし残念ながら、現在までに変異体発現マウスを得るには至っていない。この原因として使用した発現ベクターの問題、または発現した変異体がマウス胚発生に対して致死作用を有する可能性などが考えられる。現在これらの点に検討を加えている。なお、発現ベクターに関して我々は、アミノ酸輸送体の1種をβ細胞に過剰発現するトランスジェニックマウスの作成に最近成功した。そこで、このトランスジェニックマウスの作成に使用したベクターにHNF-1β変異体cDNAを組み込みなおし、変異体発現マウスの作成を計画中である。
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