異常な血管平滑筋細胞増殖が糖尿病患者の動脈硬化症進展の特徴であり、正常なアポトーシス調節機構が糖尿病状態によって破綻をきたす事を我々は推察している。高血糖状態、即ち、高濃度ブドウ糖が血管平滑筋細胞のアポトーシス制御機構にどのように影響するかを検討した。 1.高濃度ブドウ糖は血管平滑筋細胞のアポトーシスとアポトーシス関連蛋白の発現を如何に変化させるか。 ヒト冠動脈由来血管平滑筋細胞(CASMC)の細胞周期をG0/G1期に同期化した後、正常濃度ブドウ糖(5.5mM)と高濃度ブドウ糖(25mM)濃度で刺激して検討した。アポトーシスは、DNA断片化率と、フローサイトメトリーで検討した。さらに、アポトーシス関連蛋白、アポトーシス制御遺伝子(各種Bcl-2 family蛋白、p53、p21など)の発現の変化をウェスタンブロット解析により検討した。我々は、高濃度ブドウ糖は血管平滑筋細胞のアポトーシス誘導を有意に抑制することを、明らかにした。さらに、高濃度ブドウ糖は、Bcl-2 family蛋白のうち抗アポトーシス蛋白であるBcl-xLとBfl/A1の発現を特異的に抑制することを明らかにした。しかし、Baxをはじめ他のアポトーシス調節蛋白の発現には有意な変化を認めなかった。 2.各種PKCの分子種を過剰発現した血管平滑筋細胞は、高濃度ブドウ糖のアポトーシス抑制効果は如何に変化するか。PKC分子種やアポトーシス関連蛋白(Bcl-xLとBfl/A1)の活性阻害で高濃度ブドウ糖によるアポトーシス制御機構是正は可能か。 我々は、各種PKCの分子種のリポフェクチン法による血管平滑筋培養細胞への過剰発現に成功した。今後、どのPKC分子種を過剰発現させると、血管平滑筋細胞のアポトーシスやアポトーシス関連蛋白の発現が変化するかを検討する予定である。
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