研究概要 |
コレステロールにアシルコエンザイムAから脂肪酸を転移しコレステロールエステルに変換する細胞内酵素、アシルコエンザイムA :コレステロールアシル基転移酵素(ACAT)の種々の病態における活性調節機構を検討した。マウスマクロファージ由来J774細胞をアセチル化LDLと保温すると細胞内に著明なコレステロールエステルの蓄積を生じる。このとき同時に経口血糖降下剤、グリベンクラミドを添加しておくとコレステロールエステルの蓄積は有意に抑制された。細胞抽出物を用いてACAT活性を測定すると、グリベンクラミドはACAT阻害活性を有することが明らかになった。ヒト単球白血病由来THP-1細胞を用いて種々の因子のACAT-1誘導作用を検討し、活性型ビタミンD (1,25-ジヒドロキシビタミンD3)及び9-シス-レチノイン酸にACAT-1発現誘導作用のあることをみいだした。培養ヒト単球がマクロファージに分化するとACAT-1の発現が誘導される。このとき同時にHMG-CoA還元酵素阻害剤、セリバスタチンを添加しておくと、ACAT-1の発現は有意に抑制された。このセリバスタチンの効果はメバロン酸やゲラニルゲラニルピロリン酸を添加すると消失することから、ACAT-1の発現には、未知蛋白のゲラニルゲラニル化が関与していることが示唆された。ヒト単球・マクロファージの分化の過程で種々のサイトカインを添加しACAT-1発現に対する効果を検討すると、Transforming growth Factor-β1(TGF-β1)はACAT-1発現をmRNAレベルで促進することが明らかになった。
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