研究課題
平成13年度は平成12年度に引き続いて、脂肪酸のΔ9不飽和化酵素(SCD)およびパルミトイルCoA炭素鎖伸長酵素(PCE)の活性調節機構を比較検討した。平成12年度の結果からクロフィブリン酸によるΔ9不飽和化酵素の誘導は糖代謝が関与する可能性が示唆されたので、糖尿病モデルラットにおける両酵素の活性変動を検討した。ストレプトゾトシン誘導糖尿病(STZ-DM)ラットでは、SCDおよびPCE活性は著しく低下した。STZ-DMにインスリンを投与すると活性は回復した。また、STZ-DMにグルコースを負荷しても活性はほとんど変化しなかったのに対し、フルクトースを負荷すると活性が正常レベルに回復した。STZ-DMではクロフィブリン酸を投与しても活性は上昇しなかった。以上の結果から、SCDとPCEは同様の機構によって、糖およびインスリンによる活性調節を受けることが示唆された。また、グルコースフルクトースの中間代謝物が活性調節に重要であると考えられる。両酵素はオレイン酸の生合成に必須の酵素であるので、両者が協調して変動することによってオレイン酸の量が調節されるものと推察された。実際に、肝臓におけるオレイン酸の量は両酵素の活性の変動とよく一致していた。一方、遺伝的肥満モデルであるZuckerラットでは両酵素活性は上昇していた。Zuckerラットにクロフィブリン酸を投与しても活性はそれほど上昇しなかった。Zuckerラットはインスリンレベルが高いことが知られている。したがって、これが両酵素活性が高い原因である可能性が考えられる。また、クロフィブリン酸による両酵素活性の調節にはインスリンも関与している可能性が示唆された。
すべて その他
すべて 文献書誌 (1件)