研究概要 |
研究代表者らは,膵β細胞由来のMIN6細胞を用いて遊離脂肪酸のプロインスリンからインスリンへのプロセシングおよびインスリン分泌に及ぼす影響について経時的に検討した.プロインスリンからインスリンへのプロセシングは遊離脂肪酸暴露1時間後より有意に遅延し,インスリン分泌は8時間後に減少を認めた.遊離脂肪酸によるプロインスリンからインスリンへのプロセシングの障害はグルコース刺激に対するインスリン分泌抑制に比しより早期に認められた.したがって,糖尿病にみられる相対的な高プロインスリン血症の成因に,遊離脂肪酸の直接的かつ速やかなプロセシング機構に対する障害が,密接に関与している可能性が考えられた.このプロインスリンのプロセシングに重要な役割を果たしているインスリン分泌顆粒および細胞質内のCa^<2+>濃度及びpHの変化を測定することにより,遊離脂肪酸によるプロインスリンのプロセシングの遅延がCa^<2+>上昇の障害によるものかpHの変化によるものかその分子機構を明らかにする目的で,遊離脂肪酸存在下に培養したMIN6細胞を用い,蛍光指示薬であるfura-2を用いた系により,細胞質内カルシウムイオン濃度の経時的な変化を現在検討中である.また,インスリン分泌顆粒内Ca^<2+>濃度を測定するため,phogrin分子にaequorinを結合させて細胞内に導入する系を確立中である.さらに分泌顆粒膜のCa^<2+>濃度変化を検討するため,Ca^<2+>の蛍光指示薬であるいわゆるyellow 'camereon'(Ycam2)をphgrin分子に結合したphgrin-Ycam2を導入する系を確立する.
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