種々の代謝異常や環境的因子をマッチさせた時に、B1B1遺伝子多型が血清HDL-C濃度を規定する遺伝要因として重要であることを明らかにした。B1B1例をB2B2例に比べた時、前者は後者に比べて血清HDL-C濃度が約8%低下していることが明らかとなった。一方、2型糖尿病ではTaqIB遺伝子多型B2B2を有する例はB1B1に比し、HDL-C濃度が約20%程度高値となることを明らかにした。しかし、2型糖尿病ではコレステロール逆転送系がもともと抑制されており、さらにB2B2遺伝型のようにCETP活性を抑制する要因が加わった場合、HDL-C濃度が増加してもそれが直ちに動脈硬化惹起性を抑制するかどうかは疑問であると思われた。さらに、この傾向は高TG血症や肥満において顕著となることをわれわれは報告した。すなわち、年齢および血清脂質をマッチさせた高TG血症例において、TaqIB B2B2とB1B1を比べると、前者は後者に比しHDL-C濃度が有意に高値であり、日本人におけるBMI≧25Kg/m^2の肥満例においても同様の結果であった。従って、高TG血症や肥満を合併した2型糖尿病の動脈硬化惹起性は正脂血症や非肥満者に比し促進しているものと推察される。高脂血症の薬物治療との関係では、TaqIB B1B1を有する例においてスタチンのCETP抑制作用が最も顕著であることが示された。今後、異なったスタチンあるいは高脂血症治療薬においてこの作用がどのように修飾されるかをさらに検討する予定である。
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