近年の栄養摂取過剰の傾向により、肥満、糖尿病、高脂血症などのいわゆる成人病が増加してきている。糖尿病の大部分を占めるII型糖尿病は、遺伝性素因のある人に、過食や運動不足などの環境因子が加わり発症することが知られている。これらの環境因子の中で、食の欧米化による食事中の脂肪含量の高いことが、肥満やインスリン抵抗性の主要な原因と考えられている。 筋肉、脂肪組織(WAT、BAT)に特異的に発現している糖輪送体(GLUT4)は、末梢組織での糖代謝の律速段階になっていて、高脂肋食は、脂肪組織におけるGLUT4の発現量を低下させ、個体でのインスリン抵抗性を生じる。この機序を明らかにするため、5'-領域の長さの異なるミニジーンGLUT4欠失ミュータントを多種類作成し、それぞれのコンストラクトからトランスジェニックマウスを作成した。これらのマウスを用いて、脂肪組織での組織特異的シス・エレメントが転写開始点から-551と-506の間に、高脂肪食に反応するシス・エレメントが-701から-551までにあることを明らかにした。又、-700前後に存在するNF-1結合部位をミューテートしたコンストラクトを導入したトランスジェニックマウスを作成し、各紅織でのミニジーンGLUT4mRNAの発現パターンを調べたところ、GLUT4の脂肪組織特異的発現が消失することを見出した。このことはNF-1結合部位と-551と-442の間のシス・エレメントとの両方に結合する転写因子が存在することを示し、高脂肪食に反応する転写因子との相互作用が推定された。
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