研究概要 |
1、心停止ドナー肝からの肝細胞分離法の開発および生肝細胞収量の増加法とバイアビリティ向上法の研究 (1)経門脈的潅流法:心停止前のヘパリン投与により充分抗凝固化された肝のみ潅流細胞分離が可能であった。ヘパリン化が不十分な肝臓からは、いかなる時間帯においても生細胞は得られなかった。 トリパンブルー色素排泄試験におけるバイアビリティ(収量:生肝細胞数/湿肝臓重量)は、心停止時間0,30,60,90,120分でそれぞれ92.0%(1.2×10^7/wet liver),70.2(8.1×10^5),43.2(5.6×10^3),12.3(1.5×10^2),1.4(1.7×10)であった。 (2)多枝穿刺法:穿刺消化後も細胞塊として残り、心停止時間0分も含めあらゆる心停止時間においてバイアビリティのある細胞はほとんど得られなかった。 以上の結果より、経門脈的潅流法にて細胞分離を行うこととした。 2、DBcAMPの心停止ドナー肝からの肝細胞分離に対する影響 DBcAMPを心停止60分前に15mg/kg B.W.静脈内投与し、1と同様な実験を行った。 トリパンブルー色素排泄試験におけるバイアビリティ(収量:生肝細胞数/湿肝臓重量)は、心停止時間0,30,60,90,120分でそれぞれ91.3%(1.3×10^7/wet liver),76.4(7.1×10^6),52.6(4.8×10^4),26.8(4.5×10^3),13.8(3.7×10^3)であった。 DBcAMPの前投与により若干のバイアビリティと生細胞収量の増加を認めた。 3、遊離肝細胞の精製 1-(1)の心停止後30分ドナーから採取された肝細胞(viability70%)をPercollにて精製を試みたが、精製過程でほとんどの肝細胞が失われた。見かけ上トリパンブルー色素排泄試験陰性の細胞も、細胞膜には温阻血障害が起こっており精製過程の機械的刺激でmembrane leakyとなることが判明した。同時にこの細胞を精製せずにそのままMEM培養液内で培養すると、細胞膜にbudding様変化が起こっていた。また機能面では、NH_4Cl負荷で尿素合成能を検討するとコントロール(心停止時間0分)の40.3μg/g・cell/hに対し11.5μg/g・cell/hと著明に低下していることが判明した。 現在、DBcAMPの投与量および投与時期の生細胞収量に与える影響とクロールプロマジン等のmembrane stabilizerの前投与の細胞保護効果につき検討中である。
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