1.多孔質細胞接着基質であるDegraPolに対する肝細胞接着 体重約200gのWistarラットの肝臓からコラゲナーゼ消化法より分離した肝細胞浮遊液5x10^6個/mlをDegraPolに直接播種し、Williams-E培地で24時間培養。走査電子顕微鏡による観察にて、DegraPolの細孔内部に肝細胞が球形を維持して接着していることが確認された。 2.DegraPol接着肝細胞の同系ラット腹腔内移植 DegraPol接着肝細胞の同系ラットの腹腔内に移植し、移植2ないし4週間後にHE染色および走査電子顕微鏡にて観察。ラット腹腔内では、DegraPol表面に新生毛細血管が観察され、培養時と同様にDegraPolの細孔内部に球形を維持して接着している肝細胞が確認でき、DegraPolの有用性が確認された。 3.ODS-od/odラットに対する同系ラット肝細胞腹腔内移植 アスコルビン酸生合成酵素を有する同系ラットであるODS-+/+ラット肝細胞接着DegraPolをアスコルビン酸生合成酵素欠損にて骨格の変形、出血、体重減少で死亡するODS-od/odラットの腹腔内に移植し、肝細胞増殖刺激因子であるHSSを間欠的に投与し経時的に体重減少、出血傾向を記録した。体重減少および出血傾向は非移植群に比して抑制される傾向にあったが、移植10週間後の生存率は非移植群と同様に0%と有意差を認めなかった。 以上より、DegraPolは有用な肝細胞接着基質であるが、ODS-od/odラットに対する同系ラット肝細胞の脾臓内および門脈内移植で示された良好な肝機能補助能を示すには至らなかった。したがって、虚血性肝不全の危険性がある脾臓内および門脈内移植と同様な肝機能補助能を発現させるためには、より容積が少なく早期にbiodegradableな肝細胞接着基質の応用が必要であり、次年度の検討課題と考える。
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