研究概要 |
血管新生阻害剤であるTNP-470の抗癌作用は,癌細胞のapoptosis誘導であり,DNA合成のパラメーターが変化しないことから,cell cycleには影響を及ぼしていないと考えられる.ヒト乳癌MDA-MB-231腫瘍(ヌードマウス皮下に移植)では,TNP-470は営独よりもUFTとの併用においてより強い抗腫瘍効果を示した.TNP-470とUFTの併用により,腫瘍内5-FU(UFTの代謝産物)濃度が上昇した.このメカニズムは明らかにできなかったが,TNP-470は併用薬剤の腫瘍内濃度を上昇させる働きがあると推察された.TNP-470に限らず血管新生阻害剤はおしなべて同様な作用を有している可能性が示唆された.ヒト乳癌MDA-MB-231腫瘍におけるTNP-470とUFT併用療法の抗腫瘍効果は、主にTNP-470による腫瘍内5-FU濃度上昇によるものと考えられた. Vascular endothelial growth factor(VEGF)は強力な血管新生促進作用を有する増殖因子である.癌細胞のVEGF産生は,ある種の化学僚法剤やホルモン療法剤により抑制される.抗女性ホルモン剤であるtamoxifenは,エストロゲンレセプター陽性乳癌細胞MCF-7のVEGF産生を抑制した.同様にTNP-470とUFTの併用擦法もMDA-MB-231腫瘍(ヌードマウス皮下に移植)の腫瘍内VEGF濃度を低下させた.本腫瘍においてTNP-470単独におけるVEGF産生に及ぼす影響は有意なものでなかったが,UFTとの併用により,腫瘍内で増加した5-FUの抗癌作用により腫瘍細胞からのVEGF産生が抑制されたものと考えられた. 以上より,乳癌における血管新生阻害剤を用いた治療法は,特に化学療法剤やホルモン療法剤との併用により,dormancy therapyとして今後の発展が期待できると考えられた.
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