研究概要 |
雑種成犬を用い、実験を2群に分けた。FR群(n=6)ではp38MAPK阻害剤であるFR167653を60mg/Lの濃度で添加したEuro-Collins液でドナー左肺を灌流後に摘出し、4℃の同液に12時間単純浸漬保存後、lactate Ringer液でEuro-Collins液をリンスし、レシピエントに同所性に移植した。再灌流後に右肺動脈および右主気管支を結紮した。対照群(n=6)ではFR167653を添加せず同様の同所性移植を行った。動脈血酸素分圧(PaO_2),肺胞気動脈血酸素分圧較差(A-aDO_2),左肺血管抵抗(L-PVR),心拍出量(CO)を測定した。肺組織を病理組織検査に供し、多形核好中球(PMN)浸潤を計測、湿乾重量比(WDR)を測定した。冷保存中および移植後30分の肺組織中リン酸化p38MAPKをWestern blottingで解析した。その結果PaO_2,A-aDO_2,L-PVR,COおよびWDRは対照群と比較しFR群で有意(p<0.05)に良好であった。病理組織学的にはFR群が対照群に比べ浮腫、障害が軽度であった。PMN浸潤は対照群と比較しFR群で有意(p<0.05)に低値であった。肺組織中リン酸化p38MAPKは冷保存中には両群共に活性化しなかったが、移植後30分で対照群で著明に活性化した。一方、FR群ではリン酸化p38MAPKの活性化は有意(p<0.05)に抑制された。 以上の結果から,p38MAPKの活性化は肺移植において再灌流後に急激に惹起され、肺障害に関与する。FR167653は38pMAPKの活性化を抑制することでサイトカイン産生を抑制し、冷阻血再灌流障害が軽減されると考えられる. 以上から,38pMAPKの活性化阻害を標的とした肺移植における虚血再灌流障害の治療は有効と考えられる.
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