(1)Wistar系ラットより自己血を採取し、自己クリオプレシピテートを分離した。フィブリノーゲンは760mg/dlと血清の数倍の濃度であり、その他の凝固因子やフィブロネクチンも血清より高濃度で含まれていた。同時に真皮から自己線維芽細胞を分離、培養し、2〜3週間後にフィブリン糊とともに使用した。 (2)同系ラットの気管を2/3周切開し1針のみ縫合した後、A群:無処置、B群:市販の人フィブリン糊使用、C群:自己フィブリン糊使用(自己クリオプレシビテートとトロンビンを使用)、D群:自己線維芽細胞併用(自己フィブリン糊と線維芽細胞を併用)を比較検討した。縫合部の耐圧は3日、5日後にD群がB群より有意に良好であった。また、病理組織学的検討においてD群では3日目にすでに毛細血管の新生がみられ、免疫染色でコラーゲンの産生が認められた。 (3)同系ラットの小腸を切離し、3針のみ縫合した後、上述のA群、B群、C群、D群で同様に比較検討した。縫合部の耐圧を測定すると、3日、5日後にC群とD群がA群、B群より有意に高い耐圧を示した。コラーゲンに含まれるハイドロキシプロリンを測定すると、3日、5日後にD群が有意に高値を示した。 上記の結果より自己フィブリン糊と自己線維芽細胞との併用は創傷治癒に有効であると思われた。現在、血管新生因子の免疫染色および測定が進行中である。
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