研究課題
【目的】p73遺伝子が野生型として腫瘍で発現している現象に注目し、p73遺伝子およびp51/p63遺伝子の乳癌組織内での局在、増殖因子受容体の発現との関連を解析し、p73、p51/p63遺伝子の乳癌組織における機能を明らかにする。【対象】乳癌手術例57例(癌組織、非腫瘍部乳腺組織を採取)につき遺伝子解析を行ない、免疫組織化学には、遺伝子解析例を含む66例のホルマリン固定パラフィン包埋材料を用いた。【方法】RT-PCRはプライマーをp73遺伝子のN末端部、p63遺伝子のC末端部にそれぞれ設定し施行し、免疫組織化学にはp73遺伝子のコアドメインの一部(TDVVKRCPNH to YEPPQVGTEF)を抗原としてGST融合蛋白質を作成しウサギを用いポリクローナル抗体を作成、使用した。【結果】p73mRNA発現は非腫瘍部乳腺組織26例(45.8%)、乳癌組織31例(54.4%)に認めた。p63mRNAの発現は癌部では13例(22.8%)で、非腫瘍部で6例(10.5%)に認めた。免疫染色では、全症例でp73遺伝子産物の筋上皮細胞の核での発現が確認された。乳癌66例中16例(24%)で散在性に癌細胞の核が染色された。【考察】乳癌組織においてはp73遺伝子がp63遺伝子に比べ高率に発現していたが免疫組織化学的には乳癌の24%でp73遺伝子の発現を認めたにすぎず、乳癌組織におけるp73遺伝子の発現の検討では癌組織内に遺残した筋上皮細胞の評価が重要と考えられた。現在、in situhybridizationによるp73mRNAの筋上皮細胞、乳癌細胞での発現の確認を行っている。今後細胞増殖能、細胞周期、アポトーシス、p53遺伝子変異の有無との関連から、p73遺伝子の機能の解析、とくに乳癌細胞における機能解析を行う。