研究概要 |
C型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)は血管内皮細胞より合成分泌され、血管平滑筋細胞(VSMC)上の特異的受容体(ANP-B受容体)に作用し、二次性伝達物質である細胞内cyclic GMPの上昇を介して血管拡張、VSMC増殖抑制に働く。われわれはCNP遺伝子を組み込んだ非増殖アデノウイルスベクター(Ad.CNP)を作成し、培養VSMCを用いた基礎検討によりCNPの過剰発現が強力なVSMC増殖抑制作用を持つこと、さらにこの抑制が細胞周期におけるG1 arrestによるものであることをflow cytometryによって明らかにし報告した(Doi et al.,Biochem.Biophys.Res.Commun.,1997)。またin vivoにおいてもAd.CNPによりウサギ大腿動脈バルーン障害後の新生内膜肥厚が有意に抑制され、障害部位においてCNP遺伝子導入がVSMCの再分化をもたらし、血管内皮細胞の再生促進効果を持つことを明らかにして報告した(Doi et al.,Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.,in press)。更にウサギ頚静脈を同側頚動脈に移植する自家静脈グラフトモデルを作成し、静脈グラフトに対するCNP遺伝子導入の効果を検討した。移植後2週間、4週間でグラフトの新生内膜肥厚、グラフト内血栓形成、血管内皮再生の程度を組織学的に検討した結果、CNP遺伝子導入により新生内膜肥厚、グラフト内血栓形成の抑制、血管内皮再生の促進効果が認められることが明らかとなり現在報告中である。今後、同モデルにおいて更に遠隔期の静脈グラフト開存率を検討するとともに、ヒツジの冠動脈バイパスモデルにおいても同様の検討を行う予定である。
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