研究概要 |
申請者は末梢血管病変において,活性化血小板から放出されるマイクロパーティクル(MP)の化学伝達物質の輸送担体としての重要性を報告してきた.本研究では,平成13年度までにsystcmic inflammatory response syndrome(SIRS)患者や敗血症患者におけるMP産生の増強を確認し,血小板-単球結合・血小板白血球結合・白血球-白血球結合へのMPの関与を示唆し,臨床的にもMPが病態に大きく関与していることを示した. さらに申請者は,静脈血栓症における活性化血小板のprotein C活性化(activated protein C resistance=APC-R)にも注目した.欧米においてはfactor V Leiden遺伝子変異によるprotein C pathwayの異常が報告されているが,我々の検討によりSLE患者の静脈血栓症でAPC-Rが極めて強い危険因子であることが明らかになった(British Journal of Haematology 2002, 118, 577-583).APC-Rは各種リン脂質抗体の存在とは相関を示さないものの,anti-prothrombin抗体とlupus anticoagulantの共存在と相関することが明らかになった.また,SLEを伴わない深部静脈血栓症においてもAPC-Rがその危険因子であることも明らかにした(Thromb Haemost 2002, 88, 716-722).APC-Rはlupus anticoagulantやカルディオリピン抗体を含む各種リン脂質抗体とは相関しないものの,anti-protein S抗体との顕著な相関を認めた.anti-protein S抗体のAPC-Rとの相関は世界初の報告である. このように本研究において申請者は,MPの重要性と危険因子であるAPC-Rの機序解明を行い、末梢血管病変における血小板機能異常の病態解明に大きく寄与した.
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