侵襲時における末梢血Th1/Th2バランスの変動とサイトカイン動態に関する検討

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12671166
• 研究機関: 札幌医科大学
• 研究代表者: 浦 英樹 札幌医科大学, 医学部, 講師 (50264510)
• 研究分担者: 平田 公一 札幌医科大学, 医学部, 教授 (50136959) ; 山口 浩司 札幌医科大学, 医学部, 助手 (60315512)
• キーワード: 生体侵襲 / 細胞性免疫 / Th1 / Th2バランス / T細胞 / 単球 / サイトカイン / 細胞内サイトカイン測定 / ω-3系脂肪酸

研究概要

【目的】侵襲時に惹起される免疫能低下は、感染症併発やその増悪に関与する最重要因子の1つである。我々は平成12年度の本研究において、周術期のTh1細胞機能抑制および単球HLA-DR発現率の低下が術後感染症の発生に重要な影響を及ぼすことを明らかにした。そこで本年度は、敗血症患者を対象に栄養学的介入を行うことにより、細胞性免疫能が如何なる修飾作用を受けるかについて検討した。
【対象と方法】(1)敗血症症例に対して可及的早期に経腸栄養(EN)を開始しえた14例を対象に、エネルギー比率1.4%のω-3系脂肪酸を含有するEN製剤を投与した7例(A群)と、ω-3系脂肪酸を含まないEN製剤を投与した7例(B群)の2群に割付けた。(2)EN,開始直前および投与1週間後における病態指標(末梢血白血球数、リンパ球分画、CRP、血清IL-6濃度)および細胞性免疫指標(CD4^+T細胞のTh1/Th2細胞比率、単球HLA-DR発現率)の推移について検討した。なお、Th1/Th2亜分画比は細胞内サイトカイン測定法を用いて解析した。
【結果】(1)EN開始直前の各病態指標には両群間で差を認めなかった。一方、1週間後にはA群がB群に比しリンパ球分画比の増加と、CRP、IL-6濃度の低下傾向が顕著であった。(2)Th1細胞比の推移をみると、EN投与前はA群で43.6%、B群で46.5%と差を認めなかったが、1週間後にはA群で64.2%、B群で51.9%となり、A群でTh1細胞比率の有意な(p<0.05)増加がみられた。一方、Th2細胞比率はEN前後で明らかな変動を認めなかった。(3)単球HLA-DR発現率は、A群では前値が60.3%、後値が93.5%、B群では前値が56.0%、後値が72.4%と、A群で有意な(p<0.05)増加がみられた。(4)在院期間はA群が有意に(P<0.05)短かった。
【結論】ω-3系脂肪酸投与による栄養学的介入により侵襲時の細胞性免疫能を改善しうる可能性が示唆された。

研究成果

• [文献書誌] 浦 英樹, 浅井康文, 今泉 均, 池田慎一郎, 巽 博臣, 平田公一: "エンドトキシンおよびサイトカインの血中動態からみた敗血症性ショックに対するPMXの有効性"Japanese Journal of Endotoxemia Therapy. 4(1). 149-155 (2000)
• [文献書誌] 浦 英樹, 巽 博臣, 平田公一, 奈良 理, 浅井康文: "分子生物学的診断-侵襲時の病態評価としての細胞性免疫能の分子生物学的診断-"日本腹部救急医学会雑誌. 21(1). 95-103 (2001)
• [文献書誌] 巽 博臣, 平田公一, 浦 英樹: "臓器不全の発症機序"現代医療. 33(S4). 2813-2818 (2001)
• [文献書誌] 浦 英樹, 平田公一, 巽 博臣, 山口浩司, 他4名: "ω-3系脂肪酸による細胞性免疫能の賦活効果に関する検討"日本外科代謝栄養学会雑誌. (in press). (2002)