ING1遺伝子は第13番染色体長腕に位置し、細胞周期を制御し、p53と協調して細胞増殖を抑制する核内蛋白をコードする遺伝子である。ING1遺伝子には2つのスプライシング変異体が存在し、それぞれ2つのエクソンからなっているが共通のエクソンは全コーディング領域の約80%を占めるため、その共通エクソンにおいて原発性乳癌組織377例、乳癌細胞株10例を対象にSSCP-PCR法を用いて突然変異の検索を実施したが、1例にgermline missense alteration、3種類のgermline silent alteration(polymorphism)を認めたのみで、体細胞変異は認められなかった。mRNA発現の解析はRT-PCR法を用いて半定量的な解析を施行した。対象は、乳癌組織と付随正常乳腺組織各60例と細胞株10例で、乳癌組織の45%および乳癌細胞株全10例で発現低下を認めた。また、ING1mRNAの発現と臨床病理学的因子を検討したところ、発現低下と局所リンパ節転移の有無に相関を認めた。以上よりING1の発現低下が乳癌の発生・進展に関与している可能性が示唆された
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