研究概要 |
我々は肝臓の虚血再灌流障害におけるTFの関与を報告してきた。即ち、免疫組織化学的に再灌流後は時間経過とともに肥大化したKupffer細胞や血管内皮細胞にTFが強く染色され、同時に一致してフィブリンの沈着、壊死が認められた(Transplantation,1998)。また、TFに対する特異的抑制物質(Tissue Factor Pathway Inhibitor, TFPI)をラット肝虚血再灌流モデルにin vivo投与したところ、生存率、TFの発現抑制および肝壊死領域の狭小化を認めた。このことは、虚血再灌流後の細胞壊死巣の形成、進展に、TF発現による微小血栓形成および循環不全が強く関与していることを示している。今回の研究では、TFの重要性が普遍的なものか否かを検討する目的で腎臓の再灌流障害において検討した。片側腎を摘出した再灌流障害モデルを作成し、肝の場合と同様に(1)生存率(2)腎組織の変化(3)TFの局在(4)TFPIの結果等を検討した。その結果(1)腎組織障害が時間経過とともに進行したが、TFは時間経過とともに糸球体内皮細胞に強く発現された。(2)120分虚血で全例死亡していたラットがTFPIの投与で全例生存した。(3)組織学的にTFPI投与で有意に壊死部分の縮小を認めた。 これらのことからTFは各種組織再灌流障害に重要な役割を担う事が明らかになった。
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