研究概要 |
1,雌性ビーグル犬を全身麻酔下に開腹し,末梢静脈,門脈,肝動脈,上腸間膜動脈内からadenosine(ADO,0.1,0.5,1.0μmol/kg/min),またはprostaglandin E1(PGE1,10,50,100ng/kg/min)を投与した。その結果,平均動脈圧,脈拍数の変化は認められなかったが,肝動脈内投与により肝動脈血流(HAF)がADO1.0μmol/kg/min, PGE1 100ng/kg/minで投与前の約2倍に増加した。門脈内投与ではHAFのみが増加したが,PGE1 100ng/kg/minで投与前値の約110%にすぎなかったのに対し,ADO1.0μmol/kg/minでは前値の約2倍となった。上腸間膜動脈内投与ではいずれも門脈血流量を1.5〜2倍に増加させた。 2,雌性ビーグル犬を全身麻酔下に開腹し,肝周囲を剥離後、右中心葉、方形葉、尾状葉乳葉突起を切除し、右葉の肝動脈も切離した。左門脈、左肝静脈に流入する側枝に潅流用カテーテルを留置した後、総肝動脈、左門脈、左肝静脈を2時間クランプした。前半の1時間のみ氷冷Euro-Collins液1000mlで左葉を潅流し肝周囲を冷ガーゼで勢い、後半の1時間は室温に放置した。再潅流と同時に門脈内にPGE1 50ng/kg/min、または生食(コントロール)を投与し、右外側葉と尾伏葉尾状突起を切除した。再潅流前後の肝血行動態、胆汁流量、肝静脈血中ケトン対比、AST、ALTを測定し、両群間で比較した。その結果,再潅流後の門脈血流量の変化はほぼ同様であったが、肝動脈血流量はControl群では再潅流1時間まで増加した後、徐々に低下したのに対し、PGE1群では徐々に増加する傾向が認められた。一方、胆汁流出量はPGE1群が良好であった。また、再潅流1時間後の肝静脈ケトン体比はPGE1群で高値で、AST, ALT値はPGE1群で低値であった。
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