研究概要 |
本年度は,腫瘍抗原gp70(env-1)遺伝子を導入したDC (DC-AxCAgp70)を用いた抗腫瘍効果を,将来の臨床応用を想定した大腸癌同所移植モデルを用いて,腫瘍抗原ペプチドをパルスしたDC (DC/AH-1)を用いたペプチドワクチン療法と比較検討した.また,腫瘍抗原遺伝子を導入することによるDCの活性化についても,DCのリンパ節への遊走に関係するケモカインレセプターであるCCR7の発現,所属リンパ節への遊走能に関して検討した.【方法】1)CT26のマウス大腸癌同所移植モデルにDC-AxCAgp70、DC-AxCAgp70/mGM-CSFおよびDC/AH-1を接種し,腫瘍の増殖抑制効果と予後を比較した.2)DCのCCR7の発現をDC-AxCAgp70,DC-AxCAgp70/mGM-CSFおよびDC/AH-1にて解析し,さらにそれぞれのDCを蛍光色素にてラベル後,皮卞接種し,リンパ節への遊走能をFACSにて比較した.【結果】1)大腸癌同所移植モデルにおいて,DC-AxCAgp70接種では,DC/AH-1接種と比較して腫瘍の増殖を著しく抑制し(P<0.0001),予後も延長し,GM-CSFの同時導入DC接種では,さらに抗腫瘍効果は増強した.2)DC/AH-1ではCCR7の発現は認めなかったのに対し,DC-AxCAgp70では強い発現を認め,GM-CSFの同時導入DCではさらに強い発現を認め、リンパ節への遊走も増強を認め,それが著しい抗腫瘍効果の一因であると考えられた.【結語】腫瘍抗原遺伝子導入DCは,抗原ペプチドをパルスしたDCによるワクチン療法よりも強い腫瘍増殖抑制効果を示し,生存期間も延長した.さらに同時にGM-CSF遺伝子を導入することにより,抗腫瘍効果の増強を認めた.本年度で得られた結果は,本年度の目標を達成できており,今後,腫瘍抗原遺伝子導入DCにサイトカイン遺伝子を導入した免疫遺伝子治療は,消化器癌において有用な治療法となり得ると期待された.
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