研究概要 |
本研究は,BALB/cマウス由来大腸癌細胞株CT26の腫瘍抗原gp70(env-1)遺伝子をadenovirus vectorにより導入したDC(樹状細胞)(DC-AxCAgp70)を用いた抗腫瘍効果を,腫瘍抗原ペプチドをパルスしたDC(DC/AH-1)を用いたペプチドワクチン療法と比較し、さらにGM-CSF同時導入による増強効果を検討した.また,腫瘍抗原遺伝子導入によるDCのリンパ節への遊走に関係するケモカインレセプターであるCCR7の発現,所属リンパ節への遊走能に関して検討した.【方法】1)マウス背部皮下にDC-AxCAgp70、DC-AxCAgp70/mGM-CSFおよびDC/AH-1を接種し,CT26に対するCTL活性を比較した。2)CT26のマウス担癌モデルにて腫瘍の増殖抑制効果と予後を比較した.3)DCのCCR7の発現をそれぞれのDCにて解析し,さらにそれらのDCのリンパ節への遊走能を比較した.【結果】1)CT26に対するCTL活性(E/T:50)はDC/AH-1接種群の24%に対し,DC-Axgp70接種群では40%と高値を示し,さらにDC-Axgp70/mGM-CSF接種では86%と有意に上昇した(p<0.001).2)担癌モデルにおいて,DC-AxCAgp70接種では,DC/AH-1接種と比較して腫瘍の増殖を著しく抑制し(p<0.0001),予後も延長し,GM-CSFの同時導入ではさらに抗腫瘍効果は増強した.3)DC/AH-1ではCCR7の発現は認めなかったのに対し,DC-AxCAgp70では強い発現を認め,GM-CSFの同時導入ではさらに強い発現を認め,リンパ節への遊走も増強した.【結語】腫瘍抗原遺伝子導入DCは,抗原ペプチドパルスDCによるワクチン療法よりも強い腫瘍増殖抑制効果を示し,生存期間も延長し,さらに同時にGM-CSF遺伝子を導入することにより,抗腫瘍効果の増強を認めた.今後,腫瘍抗原遺伝子導入DCにサイトカイン遺伝子を導入した免疫遺伝子治療は,消化器癌において有用な治療法となり得ると期待された.
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