研究概要 |
われわれは,IL-1、TNFなどの炎症性サイトカインが過剰発現して惹起される炎症反応が虚血・再灌流障害の本態であると報告してきた.本研究では,この炎症性サイトカイン産生のkey enzymeであるJNK、p38などのMitogen Activated Protein Kinase(MAPK)に着目し、これを抑制して肝虚血再潅流障害を制御することを目的とした. 1.ラット肝虚血再灌流障害におけるMAPK動態の検討 Wistar系雄性ラット(200〜250g)を使用し,全肝虚血前、再灌流前,再灌流後の肝組織中p38、JNKの活性kinase assay法にて測定した.虚血前コントロールと比較してp38、JNKともに数培に活性が上昇する傾向が認められた. 2.MAPK inhibitor(LL-Z1640-2)投与後の血中濃度動態の検討 LL-Z1640-2は高度に脂溶性のため、血中で赤血球に吸着される.従ってその血中濃度測定には除蛋白剤による溶血が必須であることが明らかとなった.また,LL-Z1640-2を筋注,静注,腹膜内投与の3経路で投与し、血中濃度を経時的にHPLCを用いて測定、血中動態を検討した結果,その血中半減期は数分と短いことが示唆された. 3.ラット肝虚血再灌流障害に対するMAPK inhibitorの効果の検討 ラット肝虚血再潅流モデルにおける肝機能を,LL-Z1640-2非投与群と投与群で比較したところ,再潅流後180分において非投与群の血清GOT,GPTは約6000〜7000IU/Lまで上昇したのに対して投与群では約20〜30%の改善する傾向が認められた.
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