研究概要 |
今回、われわれは家族性乳癌の原因遺伝子BRCA1のRING finger domainが、同様に家族性乳癌の原因遺伝子と考えられているBARD1のRING finger domainとともにヘテロダイマーとして高いユビキチンリガーゼ活性を持つこと、さらに従来報告されている家族性乳癌におけるBRCA1のミスセンス変異がユビキチンリガーゼ活性を死活させることを発見した(J.Biol.Chem,in press,on line publish on March6,2001)。BRCA1およびBARD1はともに単独では低いユビキチンリガーゼ活性しか持たないが、ヘテロダイマーになると、極めて高い活性を示した。この際、E2酵素としてはUbcH5cに特異的であった。大腸菌より精製したRING finger domain、すなわちBRCA1のN末端1-304アミノ酸、およびBARD1のN末端25-189アミノ酸により、活性が得られたことからこの活性にはリン酸化などの翻訳後の修飾が必要でないことが示唆された。家族性乳癌にみられるBRCA1のミスセンス変異C61Gはこの活性を完全に死活させた。また、293T細胞に遺伝子移入により一過性発現させたBRCA1タンパク質はBARD1によって安定化され、逆にBARD1タンパク質はBRCA1によって安定化された。これまでにBRCA1がユビキチンリガーゼであることは報告されておらず、またRING fingerがヘテロダイマーとして機能していることも本研究で初めて証明された。現在はBRCA1-BARD1ヘテロダイマーユビキチンリガーゼの標的基質を解析中である。
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