研究概要 |
平成12年度の研究より、家族性乳癌の原因遺伝子BRCA1のRING finger domainが、BARD1のRING finger domainとともにヘテロダイマーとして高いユビキチンリガーゼ活性を持つこと、さらに従来報告されている家族性乳癌におけるBRCA1のミスセンス変異、C61Gがユビキチンリガーゼ活性を死活させるという結果が得られていた。平成13年度はまず、BRCA1のRING finger domainのなかで、活性を阻害する変異と活性に影響を与えない変異のMappingを行った。その結果、RING fingerを構成する全てのCysおよびHis残基以外にもM18T, I26A, L28A, K38A, K45A, G57Aにて活性が完全に抑制されることが判明した。このうちM18T, I26A, L28AおよびH41AはBARD1との結合が維持されたまま活性が無くなることから、UbcH5cとの結合に関与していることが示唆された。これらの結果をWashington大学Klevit博士との共同研究としてNMR結晶解析の結果と対比させ、BRCA1, BARD1, UbcH5cの3量体の構造を解析した。現在投稿準備中である。次に標的基質の同定を目的とした研究としては、ユビキチンリガーゼ活性を持たない変異型BRCA1が基質に対する結合能を維持したまま分解することが不能になるという想定の元にBRCA1(C61G)と共沈するタンパク質よりプロテインマイクロシークエンスでの同定を試みたが同定し得なかった。現在、野生型のBRCA1およびBARD1にUbcH5cの死活型変異、C85Sを強発現した系にて同様な解析を試みている。今後はさらにプロテオーム解析にて同定を試みる予定である。
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