研究概要 |
本研究の結果、われわれは家族性乳癌の原因遺伝子BRCA1のRING finger domainが、BARD1のRING finger domainとともにヘテロダイマーとして高いユビキチンリガーゼ活性を持つこと、さらに従来報告されている家族性乳癌におけるBRCA1のミスセンス変異がユビキチンリガーゼ活性を死活させることを発見した(J.Biol.Chem.,276:14537-14540,2001)。BRCA1およびBARD1はともに単独では低いユビキチンリガーゼ活性しか持たないが、ヘテロダイマーになると、極めて高い活性を示した。大腸菌より精製したRING finger domain、BRCA1のN末端l-304アミノ酸およびBARD1のN末端25-189アミノ酸が活性に十分であった。家族性乳癌にみられるBRCA1のミスセンス変異C61Gはこの活性を完全に死活させた.また、293T細胞に遺伝子移入により一過性発現させたBRCA1タンパク質はBARD1によって安定化され、逆にBARDlタンパク質はBRCA1によって安定化された。これまでにBRCA1がユビキチンリガーゼであることは報告されておらず、今回、この活性が乳癌の癌抑制に重要な役割を果たしていることが判明した。さらにわれわれはBRCA1のRING finger domainのなかで、活性を阻害する変異と活性に影響を与えない変異のMappingを行った。この結果とNMR結晶解析の結果を対比させ、BRCA1,BARD1,UbcH5cの3量体の構造を解析した。現在Wasbington大学Klevit博士との共同研究として投稿準備中である。標的基質に関してはBRCA1(C61G)と共沈するタンパク質よりプロテインマイクロシークエンスでの同定を試みたが同定し得なかった。今後プロテオーム解析にて同定を試みる予定である。
|