研究概要 |
1.DNAチップを用いた免疫寛容状態特異的な遺伝子の同定. われわれが独自に確立したマウス同所性肝移植モデルでは,ほとんどのアロ抗原の組み合わせに対して免疫寛容が成立することが明らかとなっている.今回,免疫寛容状態に特異的な遺伝子を同定するために,アロ特異的免疫寛容状態が成立したマウスの肝臓からcDNAを抽出し,DNAチップを用いて同系移植モデルと比較した.その結果regulatory protein T lymphocyteやCD24,lymphotoxin,またCD97のような免疫反応と深く関わりのある遺伝子が同定された. 2.MHC class I double positive cellの同定と単離. 従来の研究から,移植後長期にわたり移植肝中にはドナーとレシピエント双方のMHC class I抗原をもつ細胞集団が同定され,その表面マーカーの解析から,recipient typeのpremature dendritic cellの可能性が示唆された.今回はその細胞集団をcell sorterを用いて回収し,RT-PCR法でcDNAにした後,ドナータイプ,レシピエントタイプのMHC class I primerを用いてPCRによりその有無を確認した.その結果,レシピエントタイプのMHC class Iは検出されたが,ドナータイプは検出されなかった.このことによりdouble positive cellは移植肝内に遊走したpremature dendritic cellが移植肝内で産生される可溶性クラスI抗原分子をトラップしてMHC class I抗原のdouble positive cellとなり,移植肝の生着と免疫寛容の誘導をしていると考えられた. 3.メタノール資化性酵母Pichia.pastorisを用いた可溶性MHC分子作製および投与による免疫寛容誘導実験. 可溶性MHC分子作製のために,MHC class Iの細胞表面部分であるα1,α2,α3ドメインとβ2ミクログロブリン部分をpichia vector pPIC3.5にて構築し,Pichia.pastorisに形質転換した.現在はその発現タンパクの調製をおこなっているところであり,作製した可溶性MHC分子はnaive mouseに持続投与し,その免疫寛容誘導能を皮膚移植の生着を指標として検討するつもりである.
|