研究概要 |
本邦における臓器移植は、社会的認知も高まり、定着した感がある。最近の医療技術は目を見張るものがあるが、重要かつ根幹となる問題は山積みされたままである。特に小腸移植は時としてその問題が致命的となる可能性が高い。その重要な問題は拒絶と移植腸管の腸適応である。我々は後者の腸適応に着目しこれを促進させることによって拒絶をも最小限にすることが可能であると考える。腸吸収能を促進する因子として上皮成長因子(epidermal growth factor : EGF)に着目し、筆者らはラットの同系及び異系小腸移植モデルを用いてEGFのナトリウム-グルコース共輸送体(SGLT1)蛋白レベルの誘導による糖吸収促進効果(Kato Y, Hamada Y, et al. J Surg Res, 1998, Kato Y, Hamada Y, et al. Life Sciences, 2002)やペプチド吸収能の増加(Nakai K, Hamada Y, et al. Transpl Proc.)を報告した。また小腸移植手術手技として血管吻合と腸管吻合を同時に施行するone-step procedureと血管吻合後人工肛門を空置し1週間後に腸吻合を行うtwo-step procedureの比較検討も報告した。(Kitagawa K, Hamada Y et al. Transpl Proc, in press) 現在は移植小腸の腸適応の際深く関与する一酸化窒素(nitric oxide : NO)の動態に注し、小腸粘膜上皮を用いてこれらがEGFにより増幅されていることが解明できた。これらの動態やシグナルを現在解析中であり、順次学会および雑誌投稿準備中である。
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