研究概要 |
臓器移植の最終目標はドナー特異的免疫寛容の誘導である。ドナー特異的免疫寛容の誘導法が確立されればHLAの一致を必要としないため、ドナー不足の解消につながる可能性があり、また免疫抑制剤の長期投与が不要となるため移植患者の負担の軽減にもつながる。免疫寛容を導入、維持する方法の一つとして門脈内にアロ細胞を投与する事が知られている。われわれはマウスを用い、骨髄細胞(特に造血幹細胞)を静注すると肝臓にtrapされ、免疫学的寛容が誘導されることを報告した(Eur.J.Immunol,24:1558,1994)。その機序としては、clonal deletionやsuppressionではなく、clonal anergyが重要な役割を果たしていることを見いだした(Immnobiol.197:460,1997)。これらの結果に基づいて、MHCの異なった種々のマウスの組み合わせにおいて、致死的な放射線照射をせずに、骨髄細胞あるいは脾細胞を門脈より注射することによって、ドナー特異的免疫寛容を誘導し、皮膚移植で350日以上の長期生着を実証した(Proc.Natl.Acad.Sci.95:6947,1998)。加えて、ブタの異型皮膚移植において長期生着を確認した(Annals of Surgery:Vol.230(1),114-119,1999)。今回は異種移植(モルモットからマウス)で検証した。異種皮膚移植の場合、脾細胞の門脈内投与だけでは十分な寛容誘導が得られず、骨髄細胞の追加投与(Booster)を必要とした(Transplantation Proceedings,32,293-294.2000)。この結果を踏まえて、プロトコールを若干変更し、大型動物(ブタ)において異系小腸移植、腎移植を施行しているが、腎移植において2年以上の生着を確認し、より臨床に則したドナー特異的免疫寛容誘導法の確立を目指して研究中である。
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