研究概要 |
臓器移植の最終目標はドナー特異的免疫寛容誘導である。われわれは、門脈内にアロ細胞を投与することによって免疫寛容の誘導がされることを小動物ではマウスの皮膚移植で証明した(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,95,6947-6952,1998)。また大型動物ではブタの皮膚移植で証明した(Annals of Surgery,230,No.1,114-119,1999)。そして異種移植においても、移植皮膚が長期に生着することを証明した(Transplantation Proceedings,32,293-294,2000)。現在、われわれはより臨床に近いプロトコールに変更し、ブタの腎臓移植において検証している。 【方法】ドナーとレシピエントの組合せは、mixed lymphocyte responseにてstimulation indexが15以上のものを選択した。レシピエントは両腎を摘出し、同所性にドナーの腎臓を1個移植した。移植と同時に腸間膜静脈より、ドナー脾細胞浮遊液を注入した。翌日(day 1)、ドナー骨髄細胞浮遊液を静脈内に投与した。シクロスポリンA(CyA)10mg/kg/dayを、day 1〜day 14の2週間筋肉内注射した。 コントロール群としてCyAを、day 1〜day 14の2週間筋肉内注射のみを施行した。 【結果】コントロール群は1匹(71日生存)を除いて、25日以内に死亡した。門脈内投与群では、550日以上生存のブタが3匹であり、血中クレアチニン、血中BUNは、腎臓生着例では10〜21日以内に正常化した。573日、608日で犠死させ、病理学的検索をおこなったが異常所見は認めなかった。残りの一匹は1000日以上生存している。 この内容は、2001年、日本外科学会総会にて発表された。
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