平成15年度の研究成果の概要は以下に述べるとおりである。 (目的と方法)肝類洞の流れ刺激感受性を検討する目的で体重180〜220gのLewisラットを用いて、冷乳酸化リンゲル液を用いて6時間の保存後、同種同所性肝移植モデルを作成した。なお門脈再建は行わなかった。移植後、直ちに生体顕微鏡にマウントし、類洞血流速度を測定した。また同様のモデルで移植1時間後の肝臓の組織中のマロンジアルデヒド(MDA)を測定した。モデルは類洞壁細胞に及ぼす薬剤と流れ刺激を加えた群により以下の群にわけて検討した。 1群:保存6時間で流れ刺激を行わない群 2群:保存6時間で保存液にエンドセリン阻害剤を添加した群 3群:保存6時間で保存液にカルシウム拮抗剤を添加した群 4群:保存6時間後、生理的門脈圧で流れ刺激を5分間加えた群 5群:保存6時間後、生理的門脈圧の2倍の流れ刺激を5分間加えた群 (結果) 1類洞内血流速度の検討 全ての群で類洞内血流速度はzone1からzone3に移行するにしたがい、血流速度は増加していた。血流速度の検討では、2倍の門脈圧を加えた第5群で最も良好で、zone1〜3で生理的レベルの血流速度まで回復していた。灌流を加えなかった1群は、全てzoneで血流速度は低下していた。薬剤を添加した第2群と第3群、ならびに生理的門脈圧を加えた第4群は血流速度の回復は、第5群の血流速度ほどの回復はみられなかったが、第1群に比して良好であった。組織MDAは、薬剤添加の第2群、第3群と生理的門脈圧の2倍の第5群で、有意に低値であった。 さらに現在、保存肝グラフトへの適切なレベルの流れ刺激のレベルを決定するために、ラット肝を摘出後に保存0時間で6灌流しない群、7正常門脈圧で灌流した群、8正常の門脈圧の2倍で灌流した群、9正常の門脈圧の3倍で灌流した群で類洞とDisse腔の形態を電子顕微鏡にて検討中である。
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