乳癌に対する免疫遺伝子治療と腫瘍特異的プロモーターを応用した自殺遺伝子治療

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12671190
• 研究機関: 千葉県がんセンター
• 研究代表者: 宮内 基博 千葉県がんセンター, 研究局・病理研究部, 主任研究員 (70260247)
• 研究分担者: 松原 久裕 千葉大学, 医学部・医学部付属病院, 助手 (20282486) ; 田川 雅敏 千葉県がんセンター, 研究局・病理研究部, 部長 (20171572)
• キーワード: 遺伝子治療 / サイトカイン遺伝子 / 自殺遺伝子 / 腫瘍プロモーター / c-erbB2

研究概要

免疫遺伝子治療:ヒト乳癌細胞株にサイトカイン遺伝子を導入し、これをヌードマウスに接種して、抗腫瘍効果を検討した。その結果、IL-2,IL-4,GM-CSF遺伝子を導入した乳癌細胞はいずれも、マウスに生着せず完全に拒絶された。これらの遺伝子導入細胞の増殖能、浸潤能等は親株に比して大差がなく、またHLAの発現に関しても、有意な差はなかった。親株をヌードマウスに生着させた後、GM-CSF遺伝子導入細胞を腫瘍局所に投与すると、親株の腫瘍増殖は抑制され、なかには腫瘍増大の停止が観察された例もあった。これらの遺伝子導入細胞を放射線照射した場合、20Gyで細胞増殖は消失するが、放射線照射処理後6日後までサイトカインは分泌されることが判明し、それらの遺伝子導入細胞はワクチンとして使用可能であることが示唆された。
自殺遺伝子治療:大腸菌由来のuracil phosphoribosyl transferase(UPRT)遺伝子が自殺遺伝子治療として有用であるかどうかを検討した。その結果、UPRT遺伝子発現腫瘍細胞を同系マウスに接種し、5-FU投与を行なうと一度生着した腫瘍が完全に消失した。また、これらのマウスには腫瘍特異的な免疫応答が生じていた。さらに、このUPRT/5-FUの抗腫瘍作用にはバイスタンダー効果が認められ、遺伝子非導入細胞もコネキシン遺伝子が強発現すれば、5-FUによって死滅することが判明した。さらに、腫瘍高発現に関わるミッドカイン遺伝子とc-erbB2遺伝子のプロモーター領域の検討した。ミッドカイン遺伝子の5′領域2.3kbのゲノムDNA、あるいはc-erbB2遺伝子の5′領域0.5kbのゲノムDNAにレポーター遺伝子であるルシフェラーゼ遺伝子を結合させ、乳癌細胞での転写活性を測定したところ、これらの領域に転写活性を有する領域が存在していることが明らかとなった。

研究成果

• [文献書誌] Matsubara,H.,Tagawa,M. et al: "Radiosensitivity of human breast cancer cells transduced with wild-type p53 gene is influenced by p53 status of parental cells."Anticancer Res. 20. 869-874 (2000)
• [文献書誌] Miyauchi,M.,Tagawa,M. et al: "Transduction of the human deoxycytidine kinase gene in rodent tumor cells induces in vivo growth retardation in syngeneic hosts."Cancer Lett. 156. 151-157 (2000)
• [文献書誌] Kawamura,K.,Tagawa,M. et al: "Bystander effect in uracil phosphoribosyltransferase/5-fluorouracil-mediated suicide gene therapy is correlated with the level of intercellular communication"Int J Oncol. 18. 117-120 (2000)
• [文献書誌] Kawamura,K.,Tagawa,M. et al: "Expression of Escherichia coli uracil phosphoribosyltransferase gene in murine colon carcinoma cells augments the antitumoral effect of 5-fluorouracil and induces protective immunity."Cancer Gene Ther. 7. 637-643 (2000)
• [文献書誌] Miyauchi,M.,Tagawa,M. et al: "Expression of herpes simplex virus-thymidine kinase gene controlled by a promoter region of the midkine gene confers selective cytotoxicity to ganciclovir in human carcinoma cells."Int J Cancer. 91. 723-727 (2001)
• [文献書誌] Matsubara,H.,Tagawa,M. et al: "Combinatory anti-tumor effects of electroporation-mediated chemotherapy and wild-type p53 gene transfer to human esophageal cancer cells."Int J Oncol. (in press). (2001)