研究課題/領域番号 |
12671190
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
松原 久裕 千葉大学, 医学部・附属病院, 助手 (20282486)
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研究分担者 |
田川 雅敏 千葉県がんセンター, 病理研究部, 部長 (20171572)
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キーワード | 乳癌 / 自殺遺伝子治療 / 腫瘍特異的プロモーター / ミッドカイン / c-erB2 / HSV-tk |
研究概要 |
乳癌における遺伝子治療の臨床的研究として、生体の免疫応答を応用し転移巣をも治療対象とする方法と、局所治療ながら殺細胞効果を直接的に狙う方法について、その有用性について検討した。プロドラックを活性型の抗がん剤に変換する酵素遺伝子を用いる自殺遺伝子治療では腫瘍特異的な遺伝子発現が治療の効率および安全性に関して重要な意義を有している。本研究では多くの乳癌に特異的に高発現をみる2つの遺伝子のプロモーター領域に注目し、その領域によって腫瘍特異性を高めた新規の自殺遺伝子治療法の有用性を検討した。 腫瘍高発現に関わるミッドカイン遺伝子ではプロモーター領域に相当する2.3kbのゲノムDNAを用いてその下流にHerpes Simplex Virus-thymidine kinase(HSV-tk)遺伝子を結合させた。ガンシクロビルにより腫瘍細胞に特異的に増殖を抑制した。このプロモーターの5側上流領域より種々の欠損変異体を作成し、その下流にルシフェラーゼ遺伝子を結合させた。ルシフェラーゼアッセイにより腫瘍細胞で特異的かつ高発現である1.0kbの部位を同定した。 c-erbB2遺伝子についても、種々の欠損変異体を作成しルシフェラーゼアッセイによりその転写活性を測定した。この結果、乳癌細胞により強い転写活性化能を有する256bpの領域を同定した。 このプロモーターにHSV-tk遺伝子を連結しガンシクロビルに対する感受性を検討した結果、乳癌細胞に対して殺細胞効果を認め、その遺伝子導入乳癌細胞を使用して、in vivoでの抗腫瘍効果の検討を行った。対照群に比しこの組み合わせにより有意に細胞増殖を抑制することが可能であり、腫瘍特異的という安全性およびプロモーター活性の増強、腫瘍免疫の関与も報告されているバイスタンダー効果を有するHSV-tk遺伝子の利用により転移巣を含めた全身治療としての臨床応用への有用性が示された。
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