研究概要 |
食道癌の悪性度診断・個性診断の手法として癌細胞の遺伝子解析の重要性が報告されている。しかし、遺伝子解析のためには、癌細胞を採取してDNAあるいはRNAを抽出するという手法が必要であることに加えて、採取した部位の細胞が必ずしも癌全体の遺伝子情報を正確に反映していないという問題点がある。そこで、本研究においては、より簡便かつ低コストの血清検査が癌の悪性度診断として有用であるか否かを検討した。癌細胞の遺伝子情報は、血清中のタンパク情報として、反映されていると考えられる。対象は、1997年以降に当科にて入院加療した食道癌340例である。入院時血清をELISA法にて解析し、種々のバイオマーカーの血清濃度をスクリーニングし、その臨床病理学的意義を検討した。検討したバイオマーカーは、p53抗体,VEGF, PDECGF(dThdPase),1-CTP, IAP, CRP, SCC-Ag, CYFRA21-1,Midkineである。すべてのマーカーでTNMstageとの相関を認めた。多変量解析で独立した予後因子であったのは、p53抗体,VEGF, PDECGF,1-CTP, SCC-Ag, CYFRA21-1,Midkineであった。VEGF, PDECGFは、放射線治療感受性をよく反映していた。複数のバイオマーカーを組み合わせることにより、遺伝子解析を凌駕する正確な悪性度診断も可能であると思われた。今後、TNM分類と併用することで、個々の症例の個性に立脚した治療を提供できる可能性がある。
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