研究概要 |
(1)リンパ上皮腫型胃癌では13例中12例(92.3%)にEBVゲノムが検出され、通常型胃癌では97例中5例(4.9%)、残胃癌では10例中3例(30.0%)がEBV関連症例であった。残胃癌でのEBV検出率は一般胃癌に比べ有意に多い頻度であった(p=0.03)。(2)EBV関連胃癌は体上部に好発し限局隆起型が多い。リンパ節転移率は早期癌で40.0%、進行癌で60.0%にみられたが肝転移、腹膜播種などの遠隔転移は認めらなかった。(3)リンパ上皮腫型胃癌においては、浸潤リンパ球はTリンパ球が主体であり、CD4陽性Tリンパ球がCD8陽性Tリンパ球より優位であった。(4)EBVの関連する残胃癌の組織型はsig,tub1,tub2おのおの1例ずつであり特異性は認められなかった。性別(男性1例,女性2例)、深達度(m,mp,se各1例)、初回手術原因疾患(胃癌2例,良性1例)、再建方法(B-I1例,B-II2例)、初回手術からの期間(6年,12年,34年)に関してもEBV非関連残胃癌との差異はみられなかった。(5)EBV関連胃癌症例では、抗VCA-IgG、抗EA-IgG、抗EBNAの増加が認められた。特に抗EA-IgGの上昇が特徴的で、specificity90.7%と特異性が極めて高く腫瘍マーカーとして臨床応用可能と思われた。EBV非関連胃癌症例でも抗VCA-IgG,EBNA抗体価の増加する症例(皮膚筋炎など)も認められた。(6)術後5年以上経過した当科通院中の胃切除後の患者さんを対象とし、抗EBV抗体価(VCA-IgG,EA-IgG)を測定し、腫瘍マーカーとして残胃癌発症予知の可能性につき現在Prospective studyを施行している。
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