研究概要 |
肝切除後の類洞内皮細胞の再生機構を解明する目的にてラット70%肝切除モデルを用い,類洞内皮細胞の再生に必須でその強力な増殖因子であるvascular endothelial Growth Factor(VGEF)及び,その受容体であるKDR/flk-1,flt-1の発現を肝切除後の残肝組織において経時的に検討した。 (方法)ラットに70%肝切除を行い,肝切除前,6,12,24,72,120時間後に以下の検討を行った。(1)残肝再生重量。また,肝組織を採取し,(2)肝細胞,及び類洞内皮細胞のPCNAlabeling index。さらに,(3)凍結切片を作製し,抗VGEF抗体及び,KDR/flk-1,flt-1抗体を用い,それぞれの発現を経時的に評価し,また同時に血中VGEF値の推移をELISAにて測定した。 (結果・考察)(1)70%肝切除後の再生肝重量の増加は24時間後より始まり,240時間後に術前値に回復した。(2)肝細胞PCNAlabeling indexは24時間後から72時間後がピークでその後漸減した。一方,類洞内皮細胞のピークは肝細胞に遅れて72時間後がピークでその後漸減した。(3)VEGF免疫染色では,肝切除72時間後をピークに門脈域周囲を中心とした増殖期の肝細胞に発現が観察された。KDR/flk-1,flt-1の発現は肝切除前より類洞壁に沿って観察されたが,肝切除120時間後においてその発現の亢進が認められた。血中VGEFは肝切除48時間後においてのみ検出された。したがって,肝切除後の再生肝では,おもに増殖期の肝細胞からVEGFの産生が起こり,類洞内皮細胞上の発現の亢進したKDR/flk-1,flt-1受容体に作用し,肝細胞増殖に遅れて類洞内皮細胞増殖を誘導している可能性が考えられた。
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