研究課題
TI241遺伝子の発現をウエスタンブロッティング法を用いて種々の癌細胞株及び手術標本材料について行い、それらと転移能の関連についての検索を行った。その結果、実験的転移能の高い癌細胞株及び転移巣から採取培養された細胞株では、実験的転移能の低い細胞株及び原発巣から採取培養された細胞株に比べてTI241の発現が高いことを確認した。さらに癌患者からの手術病理標本を用いた検索で、TI241の発現が、血行性転移を示した患者から採取された癌組織の方が、血行性転移を示さなかった患者から採取された癌組織よりも高いことを確認した。また、リンパ行性転移、及び病理組織のグレードなどとTI241の発現には相関関係が認められなかった。これらの結果から、培養細胞株においても、臨床材料においても、転移能の獲得とTI241の発現上昇に関連が認められた。転移能の高い細胞株は転移能の低い細胞株に比べて抗癌剤によるアポトーシス誘導に耐性を示すことを観察しており、さらに患者の臨床データーから転移巣では抗癌剤の効果が低いことが観察されており、こうした結果はTI241の発現と抗癌剤耐性の間の関連を示唆するものであった。また、我々はTI241に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドが癌細胞の接着と浸潤能を低下させ、動物実験での移植実験でも発育抑制を誘導することを確認しており、アンチセンスオリゴヌクレオチドを作用させた細胞における抗癌剤耐性が低下していることを観察している。これらの結果は一部を英文論文にして既に投稿・採用されており、発表予定である。引き続き、当初の予定通りの研究が進行中である。
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