研究概要 |
今回20q13に存在するAurora2遺伝子が大腸癌において如何なる発現をしているのか、またどのような生物学的性格を持つのか検討した。大腸における発現を検討したところ、正常粘膜では15%の発現であったが、大腸癌においては60%の症例で発現の増加が確認されこの遺伝子の関与が推測された。また臨床的には同時期に再発した症例においてAurora2の発現陽性例では生存期間が短いことから、細胞増殖速度の相違が生存率に反映しているのではないかと考えられた。そこでAurora2遺伝子と細胞周期の関する検討をおこなったところ、細胞内での発現は核内の中心体および紡錘体に確認され、細胞周期G2/M期において発現の増加が認められた。またこの蛋白質の分解はAPC, E1およびE2の因子によりユビキチン化がおこなわれ、その後2時間で急速におこなわれることが確認された。(プロテオゾームインヒビターにてAurora2蛋白の分解は抑制された。) 今回の大腸癌および細胞株を用いたAurora2遺伝子の解析により、Aurora2遺伝子は細胞周期G2/M期に関与し、APC-ユビキチン-プロテアゾーム系により発現がコントロールされていることが確認され、大腸癌においてこの系の異常が細胞の異常増殖機構をつくりあげる1つの要因である可能性が考えられた。 今後Aurora2遺伝子発現をコントロールが可能となれば細胞増殖の抑制すなわちTumou Dormancy Therapyも充分に視野に入ってくると思われ、治療に役立つと考えられる。
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