胃癌発生過程の実験的臨床的解析

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12671215
• 研究機関: 信州大学
• 研究代表者: 杉山 敦 信州大学, 医学部・附属病院, 講師 (90187675)
• キーワード: ピロリ菌 / スナネズミ / 発癌のプロモーター / 形質発現 / 腸上皮化生 / ピロリ菌陰性胃癌

研究概要

動物実験では1)ニトロソ化合物とピロリ菌感染症によって発生が促進された胃癌組織を解析し、分化型胃癌と未分化型双方の胃癌が発生すること、おおび腸上皮化生は腸の形質を持つ分化型癌とのみ関係し胃の形質をもつ分化型癌と未分化型癌には関与しないことを明らかにした(国際学会発表・論文発表)。2)ニトロソ化合物の投与開始を腸上皮化生の発生するピロリ菌感染6ヶ月とすると、胃発癌促進作用は明らかでなく、ピロリ菌の胃癌への作用はイニシエーター作用でなくプロモーター作用であることを証明した(論文発表)3)ピロリ菌の胃発癌促進作用は、抗菌薬による除菌治療によって明らかに抑制されることを証明した(論文発表)。4)胃内への十二指腸液の逆流モデルを確立し、十二指腸液が逆流したピロリ菌感染胃粘膜上皮の細胞回転(BrdU標識率)は感染単独の場合よりも有意に亢進する事を証明し、胃発癌の母地としての可能性が示唆された(学会発表)。現在、ニトロソ化合物と組み合わせた発癌実験をすすめている。5)動物モデルスナネズミ(Mongolian gerbil)の胃腺粘液細胞に特有な糖転換酵素α4-GnTのcDNAのクローニングに成功した。胃癌の形質解析に応用を検討している。
臨床研究では1)ピロリ菌陰性胃癌の特性についての検討をすすめており、予定検討数100例にたいし75例を集積した。現在病理組織化学的解析を進行中である。

研究成果

• [文献書誌] Maruta F,Sugiyama A et al: "Timing of N-methyl-N-nitrosourea administration affects gastric carcinogenesis in Mongolian gerbil."Cancer Letter. 160. 99-105 (2000)
• [文献書誌] Shimizu N,Sugiyama A et al.: "Effects of lactoferrin administration in Helicobacter pylori infection animal model."Lactoferrin : Structure,function and Applications. 2. 209-210 (2000)
• [文献書誌] Shimizu N,Sugiyama A et al.: "Eradication diminishes enhansing efects of Helicobacter pylori on glandular stomach carcinogenesis in Mongolian gerbils."Cancer Research. 60. 1512-1514 (2000)
• [文献書誌] Shimizu F,Sugiyama A et al.: "Gastric gland mucous cells circulate in peripheral blood after endoscopic biopsy of the gastric mucosa."American Jounal of Gastroenterology. 96. 3017-3018 (2000)
• [文献書誌] Maruta F,Sugiyama A et al: "Role of nitrosourea in the induction of intestinal metaplasia and gastric carcinoma in Mongolian gerbils infected with Helicobacter pylori"Scandinavian Journal of gastroenterology. (In press). (2001)
• [文献書誌] 丸田福門,杉山敦 ほか: "Helicobacter pylori感染スナネズミにおける胃発癌"消化器科. 30. 16-22 (2000)
• [文献書誌] 杉山敦: "ヘリコバクターピロリフォーラム 分担執筆「化学発癌物質およびH.pylori感染による胃発癌実験」"藤岡榊 編集 医学書院(東京). 88-97 (1999)