研究概要 |
肝移植により誘導される寛容状態のメカニズムは幾つかの仮説があるが、いまだ不明である。我々は、体のなかで最も巨大なリンパ組織を形成している腸管の上皮間リンパ球(IEL)に注目し、それら細胞の肝移植によりもたらされる寛容状態における役割について解析した。寛容系としてよく確立したDAラット肝をLEWラットへ肝移植した(寛容群)。対照としてDA肝をLEWラットへ移植した(拒絶群)。術後にIELを分離して、その膜表面phenotypeと免疫学的機能について検討した。術後の各種の膜表面phenotype(αβ-TCR, CD4,CD8,OX33,およびγδ-TCR)に両群間で差はなかった。しかし、術後7日目の寛容群IELはtransforming growth factor-βとinterleukin-10のmRNA発現が有意に術前より上昇し、拒絶群IELより増強していた。また寛容群のIELをAdoptive transferすると全例に移植心の永久生着が得られた(n=6)が、拒絶群IELでは移値心の生着に変化がなかった。また寛容群de術後7日目に採取した脾細胞をtransferすると半数の動物にしか、移植心の永久生着が得られなかった(n=6)。寛容群の組み合わせにもかかわらず、移植肝を予め、致死量の放射線照射すると、急性肝拒絶反応を惹起する。このような条件下で術後7日目に採取したIELはmRNA発現及びAdoptive transferは拒絶群の結果と符号した。以上のことより、IELは肝移植の寛容誘導において、免疫調節としての役割を有し、それら機能はドナー細胞によりもたらされることが示された。
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