膵癌肝転移に対するp53アデノウイルス・ベクターを用いた遺伝子治療に関する研究

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12671225
• 研究機関: 大阪大学
• 研究代表者: 北川 透 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (40314322)
• 研究分担者: 大山 司 大阪大学, 医学部・附属病院, 医員 ; 西田 俊朗 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (40263264)
• キーワード: 膵癌 / 肝転移 / 遺伝子治療 / p53 / adenovirus vector

研究概要

肺癌をはじめとしていくつかの癌腫に対して、p53 adenovirus vectorを直接腫瘍に注入して正常型p53遺伝子を腫瘍に導入することにより、腫瘍縮小効果が得られている。膵癌においても45%から70%にp53遺伝子の変異が報告されており、膵癌においても正常型p53遺伝子を導入することにより、その進展を抑えることは十分に期待できると考えられる。
本研究の目的は、膵癌の肝転移に対するp53 adenovirus vector経門脈的投与の有効性を、マウスを用いた動物実験において評価することである。申請者はC57BL/6マウスにsyngeneticなマウス腫瘍細胞として、膵癌細胞(Panc02)をMichael A.Hollingsworth(University of Nebraska)から、大腸癌細胞(MC38)および線維肉腫細胞(MCA205)をSteven A.Rosenberg(N.C.I.)から供与を受け、研究目的での使用許可を得た。さらに、これらの腫瘍細胞を癌細胞の門脈内投与によるマウス肝転移モデルを作製した。遺伝子治療としては、既にIL-12を遺伝子導入した線維芽細胞を用いた実験において、その抗腫瘍効果を確認している。p53 adenovirus vectorに関しては、University of Pittsburghより供与を受けたadenovirus vectorの状態が不良のため、新たに岡山大学より供与を受けて実験中である。今後、抗腫瘍効果を確認後、そのメカニズムを検討するとともに、臨床応用へ向けた準備を進めていく予定である。

研究成果

• [文献書誌] Su W,Ito T,Kitagawa T, et al.: "The direct effect of IL-12 on tumor cells : IL-12 acts directly on tumor cells to activate NF-KappaB and enhance IFN-gamma-mediated STAT1 phosphorylation."Biochem-Biophys-Res-Commun. 280. 503-512 (2001)
• [文献書誌] Nishida T,Hirota S: "Biological and clinical review of stromal tumors in the gastrointestinal tract"Histology and Histopathology. 15. 1293-1301 (2000)
• [文献書誌] Nishida T, et al.: "Clinicopathologic features of gastric stromal tumors."J Exp Clin Cancer Res.. 19. 417-425 (2000)
• [文献書誌] Nishida T, et al.: "Vagus nerve is involved in lack of blood reflow into sinusoids after rat hepatic ischemia."Am-J-Physiol Heart Circ Physiol. 278. H1565-1570 (2000)
• [文献書誌] Nishida T, et al.: "Poorly differentiated thyroid carcinoma-What is it. Authors' Response."Am-J-Surg Pathol. 24. 312-313 (2000)
• [文献書誌] Nishida T, et al.: "Local control in Differentiated thyroid carcinoma with extrathyroidal invasion."Am-J-Surg. 179. 86-91 (2000)