研究課題/領域番号 |
12671229
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
村上 義昭 広島大学, 医学部・附属病院, 講師 (10263683)
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研究分担者 |
今村 祐司 広島大学, 医学部, 講師 (70274082)
檜山 英三 広島大学, 医学部・附属病院, 講師 (00218744)
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キーワード | 通常型膵癌 / 膵管内乳頭腫瘍 / 膵島細胞腫瘍 / 慢性膵炎 / DPC4遺伝子 / テロメラーゼ活性 / K-ras点突然変異 / p53 |
研究概要 |
消化器外科領域における最も予後不良とされる膵癌の各種遺伝子異常ならびにテロメラーゼ活性の関与を検討するために、まず、本年度は、当科において外科的に切除し、切除後、液体窒素中に凍結保存されている通常型膵管癌38症例、膵島細胞腫瘍7症例、膵管内乳頭腫瘍5症例、慢性膵炎症例3症例を用いて、以下に述べる各種遺伝子異常、テロメラーゼ活性の検討を開始した。 1.蛍光プライマーによるDPC4遺伝子のへテロ接合性の消失の検索 DPC4遣伝子のへテロ接合性の消失の検索においては、通常型膵管癌24症例、膵島細胞腫瘍7症例について現時点においては検索を施行した。その結果、通常型膵管癌12/24、膵島細胞腫瘍2/7にDPC4遺伝子のへテロ接合性の消失が認められた。 2.TRAP assayを用いた腫瘍内テロメラーゼ活性の検索 切除検体における腫瘍内テロメラーゼ活性の検索においては、通常型膵癌34/38、膵管内乳頭腺癌5/5、膵管内乳頭腺腫0/8、慢性膵炎1/3にテロメラーゼ活性が認められ、癌化早期に腫瘍はテロメラーゼ活性を獲得することが示唆された。 3.免疫染色によるp53発現の検索 p53発現の検索においては、通常型膵癌16/38、膵管内乳頭腺癌3/5、膵管内乳頭腺腫0/8、慢性膵炎0/3にp53の免疫染色による発現が認められ、癌においてもその発現頻度が低率であることよりp53は腫瘍の癌化成立後、後期に発現の異常が生ずることが示唆された。 4.MASA法を用いたK-ras遺伝子点突然変異の検索 K-ras遺伝子点突然変異の検索においては、通常型膵癌28/38、膵管内乳頭腺癌4/5、膵管内乳頭腺腫5/8、慢性膵炎0/3にK-ras遺伝子点突然変異が認められ、腺腫などの前癌病変においてもK-ras遺伝子点突然変異は認められた。 以上のような結果より、膵腫瘍の癌化過程においては、まず、前癌病変においてまK-ras遣伝子点突然変異が生じ、癌化早期にデロメラーゼ活性を腫瘍は獲得し、癌の浸潤増大によりp53、DPC4遣伝子の異常が生ずることが推測された。今後、症例を重ねて同様の検索を施行するとともに、術前採取した純粋膵液中の膵管細胞などについても検索を施行する予定である。
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