【目的】近年新しい細胞周期調節因子として、serine/threonine kinase domainを持つaurora2(AUR2)が同定された。本研究では消化器癌におけるaurora2遺伝子の発現を検索し、臨床病理学的因子との相関から癌の浸潤・転移機構との関連について検討した。【対象と方法】消化器癌治癒切除症例201例(食道癌53例、胃癌72例、大腸癌76例)を対象とした。切除標本の癌部(T)および健常部(N)の組織よりRNAを抽出し、aurora2特異的primerを用いてRT-PCR法にてmRNAの発現を検索した。発現を半定量化するため、内部コントロールのGAPDHで補正した後、T/N比を計算した。【結果】T/N比1.1以上を陽性とすると、食道癌で27/53例(51%)、胃癌38/72例(53%)、大腸癌36/76例(47%)が陽性例であった。食道癌においては、リンパ節転移は陽性群86%、陰性群76%と陽性群に多いものの有意差は認めず他の臨床病理学的因子との相関もなかった。胃癌においては、リンパ節転移は陽性群71%、陰性群38%で陽性群に有意にリンパ節転移が多かった(P<0.01)。大腸癌においては、リンパ節転移が陽性群64%、陰性群18%で陽性群が有意に多く(P<0.01)、リンパ管侵襲も陽生群69%、陰性群30%で陽性群に有意に多く認めた(P<0.01)。またDukes分類でも、陽性群に有意に進行例が多かった(P<0.01)。予後についての検討では、食道癌においては、陽性群、陰性群で特に差は認められなかった。胃癌においては、5年生存率で陽性群32%、陰性群62%で陽性群の予後が不良な傾向にあったが、有意差は認めなかった(P=0.065)。大腸癌においては、陽性群66%、陰性群93%であり、陽性群で有意に予後不良であった(P<0.05)。【考察】aurora2発現は、胃癌、大腸癌において、リンパ節転移に関連する因子であり、特に大腸癌においては、新しい予後規定因子と考えられた。
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