研究概要 |
1)閉塞性黄疸における肝再生能の分子生物学的検討: 閉塞性黄疸肝に70%肝切除を行い、術後のサイトカイン、増殖因子、転写因子活性などを対照群と比較したが障害は認めなかった。術後24時間後のDN合成能は閉塞性黄疽肝が対象群に比べ有意に低値であったが、細胞周期G1期のサイクリンD1の発現とサイクリンD1依存性キナーゼ活性に差を認めなかった。一方、G1/S期からS期にかけてサイクリンEの発現およびサイクリンE依存性キナーゼ活性は有意に低値を示し、その要因として転写因子C/EBPの活性化障害が考えられた。閉塞性黄疸肝の再生能低下の分子生物学的機序を論文にまとめ報告した。(参照:Biophys Biochem Res Commun 280(3):640-645,2001) 2)硬変肝における肝切除後の転写因子や細胞周期制御蛋白の発現について: 硬変肝では肝切除後肝再生能が低下していることはよく知られているが、肝切除後の転写因子や細胞周期制御蛋白の発現については不明な点も多く、硬変肝における肝切除後の転写因子活性や細胞周期制御蛋白サイクリンD1,E, Aの発現について、対照群(正常肝)と比較検討した。サイクリンD1,E, Aの発現は硬変肝において有意に低下し、またこれらは転写因子C/EBPおよびAP-1の活性低下によると考えられ、論文で報告した。(参照:Biophys Biochem Res Commun 292(2):474-481,2002) 3)減黄方法の違いによる肝再生能および細胞周期制御蛋白の発現と活性の違いについて: 我々は黄疸肝モデルを用いて術前の減黄方法により肝再生能が異なることを報告してきたが、その機序解明のために今回は正常肝を用いそれぞれ1週間の術前胆汁外瘻および内瘻モデルを作製し、肝切除後の肝再生能および細胞周期制御蛋白の発現や活性を測定した。肝再生能は、内瘻群に比べ外瘻群が有意に低値であった。また、細胞周期G1/S期のサイクリンE依存性キナーゼ活性は外瘻群のほうが有意に抑制され、術前の腸管内胆汁の存在が肝再生および細胞周期制御において重要な役割を果たしていることが明らかとなり、論文で報告した。(参照:Surgery 131(5):546-576,2002)
|