研究概要 |
1)P-selectin遺伝子:高感度polymerase chain reaction (PCR)でP-selectin遺伝子を検討し、すべてのSUIT-2由来のsublineおいてその発現を確認した。他の膵癌培養細胞株7つのうち3つにおいても弱い発現を確認した。また、SUIT-2およびsublineではthrombin receptorであるFactor II receptor (proteinase activated receptor 1 (PAR1))を有することを確認した。すなわちthrombin刺激からP-selectin発現までの経路のstartが明らかとなった。PAR1はSUIT-2以外に検討した他の7つの膵癌細胞株すべてで発現していることも確認した。一方、PAR2遺伝子の発現もPAR1と同様すべての膵癌細胞株で認めたが、PAR3遺伝子の発現はさまざまであった。PAR4の発現は検討した膵癌細胞株では検出できなかった。PAR1のfull length cDNAをcDNAライブラリーからスクリーニングすることが出来た。電子顕微鏡を使用した免疫組織化学的検討でP-selectinの細胞内局在はmultivesicular bodyであるということを明らかにした。 2)AG09B1遺伝子:この遺伝子はTONDU遺伝子(Vaudin, P. et al. Development126:4807-4816,1999)とほぼ同一であることが判明した。彼らはこの遺伝子がショウジョウバエの羽根の形成に重要であることを報告したが、ヒトにおける役割はまったく不明であった。そこで、ヒト癌組織においてその発現をPCRによって検討した結果、乳癌48%(13例/27例)、膵癌50%(1例/2例)および食道癌50%(1例/2例)で発現を確認したが、胃癌(4例)、大腸癌(8例)および肺癌(2例)ではその発現を見なかった。 3)癌の浸潤・転移を研究するための培養細胞株の樹立:新しい膵癌培養細胞株(SUIT-4)の樹立とその性格の検討が終了した。また、SUIT-2よりin vivoクローニングにより100%転移する細胞株の樹立も終了した。これらの高転移株ではmatrix metalloproteinase(MMP)活性が極めて高く、また多くの種類のMMPを発現していることを確認し、論文発表した。さらに低転移株や他の細胞株のMMP遺伝子発現やその活性についても検討し、国際学会で発表した。
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