研究概要 |
消化器癌の微小転移巣に関して血中遊離癌細胞や腹膜播種巣について臨床的に研究した結果,高頻度に微小転移巣は存在し,再発や予後と関連することを明らかにした.一方,治療面の基礎研究では,Histonede-acetylase inhibitorであるsodium butyrate (NaB)は分化誘導剤であるが,p53,bcl-2の発現とNaBによる抗癌剤感受性について検討を行ってきた.Cell lineを用い,p53とbcl-2の発現をwestern blot法,抗癌剤(5-Fu, cisplatin, SN-38, taxol)の感受性をMTT assay法,apoptosis誘導をDNA ladderにより.NaB添加の有無により検討した.p53低発現細胞で,NaB投与によりp53の発現が誘導された.NaB前処理で抗癌剤5-Fu, cisplatin, SN-38に対する感受性が約10〜27倍増強した.NaBはp53低発現癌細胞でp53を誘導し抗癌剤感受性の増強が可能であり臨床上も有用と考えられた.Drug carrierとして水溶性αGルチン,αGヘスペリジンといった糖転移ビタミンPを用いたマイクロカプセル(MC)の調整を試みた.MC調整は糖転移ビタミンを溶解させた水溶液を連続相とし、クロロホルム20mlに生分解性高分子であるポリ乳酸を溶解させたものを分散相とした。連続相にPVAと糖転移ビタミンP添加によりMCが調製できた。調製したMCの電顕写真から、αGルチンでの粒径は1μm〜2μm、αGヘスペリジンでの粒径は0.5μm〜1μmであった。p53含有プラスミドを作成しMCに封入する実験を遂行中である.また,MC以外の方法としてリポザイムについて検討した.薬剤耐性因子Lung resitence-related protein (LRP)特異的リポザイムを作製後,多剤耐性乳癌細胞MCF-7AdVP3000細胞に導入したMCF-7AdVP3000/RzLRP細胞を作製した.MCF-7AdVP3000/RzLRP細胞ではLRP発現低下が確認され,adriamycinに対する感受性が増強した.以上より今回の研究では遺伝子封入MCが完全に作製できなかったが,p53導入による抗癌剤感受性の増強や薬剤耐性因子を克服するリポザイムを作製できたことは今後の治療法に有用であると考えられた.
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