研究概要 |
目的:進行食道癌に対する放射線化学療法の有用性は広く認識されているが、その感受性規定遺伝子はまだ確定されていない。すなわち、本研究の目的は食道癌に対する放射線化学療法のresponderとnon-responderに関与する遺伝子解析を網羅的に行うことにある。 対象と方法:本研究では放射線化学療法開始前に研究参加の同意を得た進行食道癌症例23例より上部消化管内視鏡下に食道癌部より生検標本を採取した。Arcturus社製PixCell II LCM systemを用いてLaser Capture Microdissectionにより食道癌細胞のみを選択的に採取し、RNA抽出を行った。癌細胞のtotal RNA量は微量であるがlinear amplificationを施行することで解析可能なmRNA量を得ることができた。これらの食道癌細胞から得られたmRNAを正常食道組織のmRNAを対照としhybiridaizationすることでcDNA microarray(理化学研究所作成、ヒト20K chip)を用いて遺伝子発現を解析し、23例全ての解析を終了した。さらに、結果を放射線化学療法施行後の臨床的効果判定(画像診断、組織学的診断)と予後調査との関連性を解析ソフトを用いて統計学的解析を行った。 結果:遺伝子解析により食道癌に対する放射線化学療法のresponderに関与する一定の遺伝子を拾い上げることはできなかった。また、non-responderに関しても同様であった。したがって、学会発表や論文発表は行っていない。一定の遺伝子を拾い上げることができなかった原因とし考えられるのは、(1)RNA抽出時における検体保存や処理が不適切であった。(2)放射線化学療法のdose設定が不適切であったなどが考えられる。 考察:進行食道癌に対する放射線化学療法のresponder, non-responderの遺伝子解析の必要性は非常に高く、様々な施設で行われている。しかし、一般臨床に応用できるような結果が得られていないのが現状である。食道癌に対しては外科的切除に替わって放射線化学療法の有用性が指摘されるおり、今後益々responder, non-responderの解析の必要性が高まるものと考えられる。今回の結果を踏まえ、研究してゆく所存である。
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