研究課題
胆道系発癌の機序は未だ不明である。我々はこれまで、胆道系に高率に癌を生じる胆道拡張症を含む、膵胆管合流異常症の研究から、その発癌機構を検討してきた。これにより、テロメラーゼ、Bcl-2、p53、k-ras、Ki67、total mRNA量などに以上が生じることを報告し、また発癌の初期ではテロメラーゼ、Bcl-2の発現が重要であることを、確認してきたが、それが、何故起り、また何を引き起こすのかについては、明らかでない。最近数万個の遺伝子発現を包括的に検討可能であるmicroarray systemが開発された。これによる胆道系前癌病変の膵胆管合流異常症の発現プロファイル作成を試みている。Microarrayで十分なデータを得るには、total RNAで100μg、mRNAでは1μgが必要であることから、一採取検体で複数回の検討を行うためには、検体量が充分ではなくRNAの増幅が必要である。RNAの増幅にはT7プライマーを用いたlinear amplificationが行われる。現在ヒト検体におけるlinear amplificationの条件設定中であり、ヒト検体からも充分な増幅が得られること、その際の約2万個の遺伝子発現情報は相関係数0.6〜0.7程度の高い相関があること、また上位100あるいは下位100の遺伝子発現情報はほぼ保たれることなどを確認してきた。また他サンプルの解析の中で分かってきたいくつかの解析方法の開発にも関わっており、今後は膵胆管合流異常症サンプルの発現プロファイル作成、及びその解析に着手する。